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珍事件手記 第12話 不審な依頼

不審な依頼

いつものように、私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。

電話をとると、すかさず早口で申し立てる男性がでた。

「今からお願いしたいのですが、そちらにはどんな人がいますか?」

息を切らせながら早足で歩きながら携帯電話で連絡しているようである。

「内容によって派遣する人間は違いますが、今なら数人が待機しております。」

「最後まで、きっちりとしてくれる人をお願いします。」

「私共は、誠心誠意で対応致しておりますので、全員が責任を持って対応致します。」

「それなら、今から来てもらえますか。」

「どちらまでお伺い致しましょう。」

「今、新大阪に居るのですが、目の前にホテル「US」というのがあるので、そこに入ります。入ってから、もう一度電話します。」

電話をかけてきた男性は、早口で切羽詰ったような素っ気無い話し口調であり、誰かに追い駆けられている様子にも伺えた。

追っ手が迫って来、慌てて目の前のホテルに逃げ込んだのかもしれない。

私は、腕っ節の良い武術の経験がある大柄な調査員3名を連れて、依頼者が入ったホテルに向かった。

暫くして、会社の事務員から私の携帯電話に連絡が入った。

「さっきの依頼者から連絡があり、502号室に入ったから直接部屋に来て下さいとの事です。」

「了解」

我々は、依頼者が入ったホテルに付き、付近に不審な人物が張り込んでいないか確認し、502号室のドアをノックした。

「先ほど電話を頂いたものですが。」

「待ってました、どうぞ・・・・・・・」

我々が部屋に入ると、どうした訳か、依頼者は大慌てで部屋の隅に隠れ、訳の判らない事を言っている。

「すみません、ごめんなさい、お金なら全部あげますから、許して下さい。」

何かに脅えている様子である。

追われている人物と我々を間違っているのだなと判断した。

「大丈夫ですよ、我々は調査機関の者ですから。」

依頼者は、又もや訳の判らないことを言い出した。

「まさか、女房に雇われた探偵か。」

依頼者を落ち着かせ、電話があったので、こちらに来た事を説明した。

依頼者が慌てふためいた真相はこうである。

出張ヘルスに電話して、女性を派遣してもらおうとホテルに入ったら、恐そうな男性4人が入ってきたので、恐喝されると思った。

そして、探偵だと判って、女房が浮気の現場を押さえようとしていると思った。

どうしてこのような事になったのか?

部屋のテーブルに置かれているスポーツ新聞に目をやったところ、すべてが判明した。

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