住居調査珍事件
いつものように、電話のベルが、けたたましく鳴り響いた。
若い女性からの依頼内容は、下記の如くである。
「離婚暦が有る弁護士と、結婚を前提に交際をしているが、自宅がどこか教えてくれないので、住居地を調べてほしい」との依頼である。
私は、簡単な調査であると思い、安請け合いをしてしまった。
調査初日、被調査者の弁護士事務所付近にて、帰宅途上を尾行する為に張込みを開始した。
暫くすると、事務所から従業員の女性2名と共に、弁護士が出てきた。
3名は、近くの駅にて別れたが、弁護士は再度、事務所に戻った。
忘れ物でもしたのかと思ったが、先ほど別れた筈の女性1名が、事務所に戻ってきた。
弁護士と従業員の女性は、事務所前にてタクシーに乗車したので、私は配備していたオートバイにて尾行を開始した。
弁護士と女性は、繁華街にあるイタリア料理店に入店した。
一般のサラリーマンでは、滅多に入ることが出来そうにない高級店である。
二人は、同店にて食事を終え、付近の会員制クラブに入店した。
数時間が経過し、両人は同店を出、タクシーに乗車した。
タクシーは、住宅街の一角に所在するマンション前にて停車し、両人は同マンションに入った。
入った部屋の表札を確認したが、アルファベットで「MIYUKI」と記載されており、女性の部屋のようである。
室内の様子が伺える場所が無いか探したところ、向かいにあるマンションの屋上から同室内が目視できそうである。
私は、向かいのマンション屋上から室内の様子を伺った。
蒸し暑い夜であったので、窓を開けたまま両人は・・・・・・
証拠写真を撮影をして、玄関口にて張込む事とした。
いつの間にか、朝になってしまい、弁護士と女性は勤務先に出社した。
私は、一旦会社に戻り、仮眠室にて休んだ。
調査2日目、再度、弁護士事務所前にて張込みを開始した。
初日と同じく、3名にて事務所を出た弁護士は、今回は女性2名と別れ、地下鉄に乗車した。
やや離れた地域に所在する、スナックに単身にて入店した。
午前1時30分、店の電光看板が消灯し、ホステスと思われる女性1名と弁護士が出てきた。
両人は、店先にてタクシーに乗車した。運良く、別のタクシーが来たので、私もタクシーにて尾行した。
二人は、マンションに入った。
入った部屋の表札は、またもや別人の名前が記載されている。
2日間、連続の徹夜張込みとなってしまった。
そして、3日目の調査、今度は依頼者のマンションに入ってしまった。
調査4日目、やっと、自宅と思われる一戸建ての立派な家に入った。表札も本人名である。
翌日、付近にて聞込みを行なったが、弁護士は子供が二人おり、妻とは中睦まじいが、出張が多いので、週の内、半分しか帰宅できないそうである。
依頼者に、証拠写真を添付した報告書を手渡したところ、告訴するそうである。
・・・この弁護士を弁護する弁護士は現れたのであろうか?・・・