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珍事件手記 第17話 激怒

激怒珍事件

いつものように、電話のベルが、けたたましく鳴り響いた。

若い女性からの調査依頼である。

「結婚を前提にお付合いをしている男性がいるのですが、最近になって相手が妙に冷たくなり、別の女性と浮気している様子なので、調べてください。」

この言葉は、今まで何十回、何百回と聞かされている提言である。

私は、依頼者の女性に詳細を伺うために、喫茶店で待ち合わせをした。

その女性は、25歳前後の可愛らしい女性であった。

この時は「手馴れた仕事で、すぐに結果が出る」と高を括っていた。

翌日、被調査者の勤務先付近にて張込みを開始し、相手の男性が退社するのを待った。

暫くすると、男性は単身にて会社を出、駅前の喫茶店に入店した。

店内の様子を伺うと、依頼者の女性と相席している。

私は、依頼者に対し「会うのであれば、前以て一言告げてくれたら良いのに」と思った。

両人は、喫茶店を出、付近の映画館に入った。

この映画は、上映時間が3時間も掛かる映画である。

「まだ調査初日だし、あと2日の調査期限がある、今日は一先ず、切上げるとするか」

翌日、再度被調査者の勤務先付近にて張込みを開始した。

前日と同じく、被調査者が単身にて会社を出た。

その後、又もや前日と同じ喫茶店に入店し、依頼者と相席しているではないか。

暫くして、両人は喫茶店を出、駅から電車に乗車した。

途中、依頼者は自宅最寄の駅にて下車した。

被調査者は、その後、単身にて帰宅した。

付近にて張込みを行なっていたが、被調査者の自宅電気が消灯したので、張込みを解除した。

翌日、今日は調査最終日である。

私は、被調査者の退社を待った。

又しても、依頼者と共に喫茶店にて相席している。

両人は、同店を出た後、ファッションホテルに入店してしまった。

翌日、私は依頼者に電話で苦情を申し立てた。

「3日間調査致しましたが、貴方と会っているだけで、他の女性とは接触していませんよ。

男性と会うなら会うと一言連絡して頂かないと困ります。」

すると、どうであろう、依頼者は激怒して私に食って掛かって来た。

「何を言っているんですか、私はこの3日間相手とは会っていません。

いい加減な報告しないで下さい。私が相手と会っていた証拠はあるのですか。」

残念ながら、依頼者と会っているだけなので、写真撮影は一切していなかった。

「いいでしょう、もう一日だけ調査します。」

私も激怒して答えた。

翌日、再三に渡り、男性の退社後を尾行した。

やはり、今までと同じ喫茶店にて依頼者と相席している。

同店を退店した両人は、ショットバーに入店した。

その後、依頼者と被調査者は、それぞれ帰宅した。

今回は写真撮影だけではなく、ビデオも確実に録画している。

今度は、私が依頼者に激怒して食って掛かる番である。

翌日、4日間の報告書に写真を貼付し、録画したビデオテープを所持して、依頼者と待合わせた。

「このとおり、貴方と相手の男性が会っていた証拠です。」

思っていたとおり、依頼者は顔を真っ赤にして黙り込んでいる。

・・・やった!俺の勝ちだ!・・・

しかし、依頼者から出た言葉は謝罪ではなく、落胆の一言であった。

「この女・・・・私の妹です・・・・」