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珍事件手記 第20話 侵入経路

進入経路珍事件

いつものように、私のデスクの電話がけたたましく鳴り響いた。

今回の依頼内容は、自宅に誰かが深夜に侵入し、娘の下着や部屋を荒らされる事が時折起こるので、犯人を捕まえて欲しいとの依頼内容である。

私は、依頼者宅に赴き、侵入出来る場所がないか検証した。

この家の住人は、ご主人と奥さん、そして娘の3人住まいで、年頃の娘の部屋は2階の表通りに面しているが、窓には格子が付いており、侵入は不可能である。

裏口と玄関は確実に施錠されており、合鍵がない限り開けることは容易ではない。

しかも、部屋を荒らされた朝も、玄関と裏口は施錠されたままである。

侵入の手口を掴めないまま、調査を着手する事となった。

調査段取りは、同宅の正面玄関と裏口を目視出来る場所だけではなく、四方全てを張込み、侵入者を把握できる万全の体制を整え、調査着手時間を皆が寝静まった午前0時から午前5時迄とした。
数日間、毎夜の張込を行なったが、犯人は現われない。

しかし、依頼者から苦情がもたらされた。

「しっかりと調査して頂かなくては困ります。昨晩も部屋を荒らされました。しっかりと調査して下さい。」

我々は、言われるまでもなく、一瞬たりとも監視を怠ってはいないが、侵入者は一切認められなかった。

依頼者の妄想ではないのか?とも思ったが、面と向かっても言えない。

我々は、調査段取りを変更し、24時間体制にて同宅を張込む事とした。

張込三日目の事である。

午後5時20分、娘さんが帰宅後、奥さんが買い物に出た。

午後5時22分、娘さんと同年代の男性が玄関より入った。

午後5時56分、奥さんが買い物より帰宅した。

午後8時40分、ご主人が帰宅した。

午後11時36分、同宅の室内灯が全て消灯した。

午前7時05分、ご主人が出勤した。

午前7時15分、奥さんと娘さんが同宅より出、娘さんは出勤し、奥さんはゴミを集積所に出し、近隣の主婦と立話をした。

午前7時16分、娘さんと同年代の男性が同宅より出た。

午前7時25分、奥さんが帰宅した。

我々は、念の為に娘さんと同年代の男性を尾行した。

男性は、徒歩にて10分程度の場所に所在するマンション一室に入った。

私は、依頼者に男性の事を報告したが、昨日は誰も来客はなかった。その様な男性は知らないとの事である。

我々は、男性宅に向かい、真実を求めたところ、信じ難い事実を知らされた。

男性のマンションは、娘さんの帰路途上にあり、毎日窓からその姿を見、時折尾行して娘さんが帰宅後、母親が買い物に行く隙に家に上がり込み、押入れ上部に身を隠し、息を潜ませていたそうである。

皆が寝静まった深夜に、娘さんの部屋に行き、朝方まで寝顔を観、再び押入れの上部に身を隠して、娘さんの着替えを観てから、母親がゴミを出しに行った隙に玄関から逃走していた。

その男性の言分はこうであった。

「何かあった時には、僕が守ってあげようと思った。」