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珍事件手記 第27話 盗聴

盗聴珍事件

いつものように、私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。

今回の依頼は、妻が浮気をしている様子なので、自宅に盗聴器を仕掛けて欲しいと云う依頼である。

私は、依頼者の自宅に赴き、壁に設置されている電気コンセントカバーを取り外し、壁の中に有る電線上に盗聴器を設置して、自動録音装置のスイッチを入れた。

すると、どうした事か自動録音装置から「キ~ン」と云う音が入ってくる。

録音装置と発信機を調べたが、故障している様子はない。

このような音が受信機側から出ると云う事は、電波が干渉している可能性がある。

私は、今取り付けた盗聴器を外し、盗聴発見機で調べる事とした。

すると、どうであろう、寝室の電気コンセントに付けられている二股ソケットから不審な電波が出ている事が判明した。

そう、既に何者かが室内盗聴を行なっていたのである。

急遽、依頼内容は盗聴器設置者の割出しに変更となった。

取り付けられている盗聴器は電波を出す機種である為、付近には受信機が有る筈である。

私は家屋内の隅々まで受信機を探したが、見つからなかった。

また、自宅付近の自動販売機の下や原付など、受信機が隠されていそうな場所も探したが、それらしき物は無い。

付近に受信機が見当たらないと云う事は、近隣者が傍受しているか、直接付近まで来て傍受しているかのどちらかである。

私は、一旦現場を引き揚げ、夫婦が寝室に入る時間帯に現場付近で張込む事とした。

付近で張込んでいると、1台の乗用車が路上に停車し、エンジンを切った。

しかし、車内から誰も出てこない。

私は、酔払いの振りをして千鳥足でその車輌脇を通り過ぎた。

車輌内に居た人物は若い男性で、イヤホンを耳に付けている。

1時間程が経過し、その男性はエンジンを掛けて発進した。

私はその男性を尾行し、自宅を割出した。

男性の自宅は現場から十数分走行した場所にあるマンションの一室であった。

翌日、私は男性の勤務先割出しの為、そのマンションで朝から張込む事とした。

男性は背広姿で車輌にて出、ある雑居ビルに入った。

入室した部屋の看板には「○×商事」と記されているが、何の会社か解らなかった。

暫くして、男性が同社より車輌にて出たので、尾行を開始した。

一般家庭を廻り歩き、訪問販売をしている様子である。

暫く尾行していると、依頼者の自宅方向に向かい始めた。

男性は、依頼者の自宅裏に車輌を駐車し、チャイムを鳴らして同宅に入った。

私は、男性が取り付けた盗聴器の周波数に合わせた受信機のスイッチを入れて、室内の音声を傍受した。

・・・その受信機から流れてきた音声は、依頼者の妻と男性が寝室で・・・

そうである、依頼者の妻はこの男性と浮気をしており、男性は寝室に盗聴器を設置し、毎晩の如く付近で夫婦の音声を傍受していたのである。