失敗珍事件
其の1 「 家出 」
いつものように私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。
依頼者は、声から察すると、何処となく品がある話し方をする中年女性である。
「うちの子が家出をしてしまったのです、捜してください。」との依頼である。
「家出の状況を詳しく説明して頂けますか?」
「3日前に私は、その子と部屋で遊んでいたのです、すると突然、飛び出してしまったのです。」
「お子さんの歳はいくつですか?」
「もうすぐ4歳になります。」
「警察に保護願いは出しましたか?」
「勿論です、しかし率先して捜してくれないのです。」
「解りました、今からお宅までお伺い致します。」
私は電話を切ってから大急ぎで依頼者宅に向かった、会社からかなりの距離があるが、4歳になる子供が3日間も行方不明で、生死が危ぶまれる。
私は、依頼者宅に着いて、家出の理由が無いか聞いてみたが、一切無いと言う。
依頼者は、止めど無く涙を流しており、高齢出産で溺愛していた子供であろうと推測できた。
「あの日、この部屋で二人して遊んでいたのです、すると、その窓から飛び出してしまったのです。」
「お子さんの写真を見せて頂けますか?」
・・・・・・私に手渡されたのは、セキセイインコが写っている写真であった・・・・・・
其の2 「 変態 」
いつものように私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。
私は新米の探偵である、しかし、事件解決の意欲は誰にも負けない。
電話の依頼内容は、ストーカーに追われているので、捕まえて欲しい。
との依頼である。
私は、早々、依頼者の近辺調査にあたった。
依頼者は、デパートに買物に行くと言うので、やや離れた位置からストーカーが着いていないか確認するために依頼者を尾行した。
依頼者は、あるデパートに入り、買物をしているが、私は目を離さずに監視していた。
すると、私のすぐ傍で、ガードマン二人がこう言った。
「ここで何をしているのですか?」
私は、ふと付近を見渡すと、そこは女性用下着売場のコーナーであった。
しかも、私は依頼者に気を取られ、無意識の内に商品の下着をしっかりと握り締めていたではないか。
あわてて捨てたが、その行動が不自然であったのか、私は警備員室に連れて行かれた。
「防犯カメラを見ていたら、女性用の下着を握り締め、一人の女性をじっと見ている男が居たので、てっきり異常者かストーカーだと思いまして、申し訳ありません。」
・・・・・・ストーカーを捕まえに行ってストーカーになるとは・・・・・・
其の3 「サービス」
いつものように私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。
依頼者は若い男性で、結婚を前提に付き合っている女性が居るが、両親に話したところ「調べてから結婚しなさい」と言われたらしい。
私は、その女性を尾行した。
その女性は、非常に短いスカートを着用しており、階段を昇る時に後ろから尾行していると、下着がチラチラと見えるくらいであった。
しかも、長くて美しい足の持主で、本人もそれを自慢したいので、短いスカートを着用しているのであろう。
私は、依頼者へのサービスのつもりで、女性が階段を昇っている写真を出来るだけローアングルにて写真撮影した。
女性の身上、身辺、経歴、職業、性格など、何を取っても申し分のない女性であることが判明し、このような女性と結婚できる依頼者が羨ましいくらいであった。
私は、調査報告を手渡し、申し分のない女性であることを伝えた。
しかし、依頼者の母親が、この結婚に反対し出したのである。
私が提出した調査報告書の写真を見て、
「こんなに短いスカートで外に出る節操のない女性は、嫁に相応しくない。」との理由であった。