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珍事件手記 第6話 失敗

失敗珍事件

其の1 「 家出 」

いつものように私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。

依頼者は、声から察すると、何処となく品がある話し方をする中年女性である。

「うちの子が家出をしてしまったのです、捜してください。」との依頼である。

「家出の状況を詳しく説明して頂けますか?」

「3日前に私は、その子と部屋で遊んでいたのです、すると突然、飛び出してしまったのです。」

「お子さんの歳はいくつですか?」

「もうすぐ4歳になります。」

「警察に保護願いは出しましたか?」

「勿論です、しかし率先して捜してくれないのです。」

「解りました、今からお宅までお伺い致します。」

私は電話を切ってから大急ぎで依頼者宅に向かった、会社からかなりの距離があるが、4歳になる子供が3日間も行方不明で、生死が危ぶまれる。

私は、依頼者宅に着いて、家出の理由が無いか聞いてみたが、一切無いと言う。

依頼者は、止めど無く涙を流しており、高齢出産で溺愛していた子供であろうと推測できた。

「あの日、この部屋で二人して遊んでいたのです、すると、その窓から飛び出してしまったのです。」

「お子さんの写真を見せて頂けますか?」

・・・・・・私に手渡されたのは、セキセイインコが写っている写真であった・・・・・・


其の2 「 変態 」

いつものように私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。

私は新米の探偵である、しかし、事件解決の意欲は誰にも負けない。

電話の依頼内容は、ストーカーに追われているので、捕まえて欲しい。

との依頼である。

私は、早々、依頼者の近辺調査にあたった。

依頼者は、デパートに買物に行くと言うので、やや離れた位置からストーカーが着いていないか確認するために依頼者を尾行した。

依頼者は、あるデパートに入り、買物をしているが、私は目を離さずに監視していた。

すると、私のすぐ傍で、ガードマン二人がこう言った。

「ここで何をしているのですか?」

私は、ふと付近を見渡すと、そこは女性用下着売場のコーナーであった。

しかも、私は依頼者に気を取られ、無意識の内に商品の下着をしっかりと握り締めていたではないか。

あわてて捨てたが、その行動が不自然であったのか、私は警備員室に連れて行かれた。

「防犯カメラを見ていたら、女性用の下着を握り締め、一人の女性をじっと見ている男が居たので、てっきり異常者かストーカーだと思いまして、申し訳ありません。」

・・・・・・ストーカーを捕まえに行ってストーカーになるとは・・・・・・


其の3 「サービス」

いつものように私のデスクの電話が、けたたましく鳴り響いた。

依頼者は若い男性で、結婚を前提に付き合っている女性が居るが、両親に話したところ「調べてから結婚しなさい」と言われたらしい。

私は、その女性を尾行した。

その女性は、非常に短いスカートを着用しており、階段を昇る時に後ろから尾行していると、下着がチラチラと見えるくらいであった。

しかも、長くて美しい足の持主で、本人もそれを自慢したいので、短いスカートを着用しているのであろう。

私は、依頼者へのサービスのつもりで、女性が階段を昇っている写真を出来るだけローアングルにて写真撮影した。

女性の身上、身辺、経歴、職業、性格など、何を取っても申し分のない女性であることが判明し、このような女性と結婚できる依頼者が羨ましいくらいであった。

私は、調査報告を手渡し、申し分のない女性であることを伝えた。

しかし、依頼者の母親が、この結婚に反対し出したのである。

私が提出した調査報告書の写真を見て、

「こんなに短いスカートで外に出る節操のない女性は、嫁に相応しくない。」との理由であった。