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珍事件手記 第16話 修羅場

修羅場珍事件

いつものように、電話のベルが、けたたましく鳴り響いた。

若い女性からの調査依頼である。

「結婚を前提にお付合いをしている男性がいるのですが、最近になって相手が妙に冷たくなり、別の女性と浮気している様子なので、調べてください。」

私は、詳細を電話にて伺い、調査員2名と早々に男性が勤務する会社に赴いた。

男性が勤務する会社は、海外旅行のツアーを斡旋している店舗勤務で、不特定多数の客を相手にしている営業職勤務である。

我々は、相手の男性の面を取り、付近にて張込みを開始した。

午後8時30分、男性は単身にて同社を出、徒歩にて駅前のファミリーレストランに入った。

このレストランは、ガラス張りであったため、外から中の様子が伺える。

男性は、店内にて前以て待合わせていたと思われる20歳前後の女性と食事を始めた。

我々は、張込み用の車輌を付近に配備し、相手が退店するのを待った。

午後9時15分、相手の男性と女性は、同店を出、店先にてタクシーに乗車した。

午後9時35分、ファッションホテル前にて、両人はタクシーを下車し、同ホテルに入店した。

暫く付近にて張り込んでいると、依頼者から携帯に電話が入った。

「今は、何処にいますか?」

「女性と共に、ファッションホテルに入っていらっしゃいます。」

「すぐに、そちらへ向かいます。」

私は、このまま相手の女性の自宅まで割出したほうが良いと伝えたが、どうしても相手の女性の顔を見たいと、言う事を聞かない。

暫くして、依頼者の女性が我々の張込み車輌に乗込んで来た。

依頼者は、思い詰めたような形相で、ホテルの出入口を凝視しており、一言も口を開かない。

午後11時25分、ホテルから両人が出てきた。

我々がそれを察知するか否かの内に、依頼者は張込み車輌のドアを開け、飛び出した。

走りながら、ハンドバックから何かを取り出した。

「まずい、取り押さえろ。」

我々3人が依頼者を取り押えた時には、男性の腹部に果物ナイフが刺さっていた。