身上調査珍事件
いつものように、私のデスクの電話がけたたましく鳴り響いた。
今回の依頼者は、若い男性である。
「結婚を前提に、半年前から付き合っている女性がいるのですが、判っている事は名前と年齢だけで、それ以外の事は一切話をしてくれないので、心配となり女性の身上を調査して欲しい」
との依頼である。
調査を着手するにしても、被調査者である女性の居住先も勤務先も判らない状態で、依頼者が女性と接触した後を尾行して割出す事とした。
数日後、依頼者から連絡が入った。
「明日、午後6時に女性と会うので、調査をお願いします。」
我々は、指定の喫茶店にて張込んでいると、まず依頼者が入店してきた。
数分後、女性が同店に現れ、依頼者と同席した。
その女性は、背が高くファッションモデルでも通用するほどのプロポーションを持つ美しい女性であった。
依頼者と女性は喫茶店を出、付近のレストランに入店した。
両人は道を歩くときも互いに寄り添い、腕を組み、熱々のカップルである事は傍目でも判る位であった。
レストランで食事を終えた両人は、駅前にて別れた。
我々は、その女性を尾行した。
女性は、タクシーを止め20分程度走行した場所にあるマンションの一室に入った。
深夜まで張込みを行なったが、同室の出入は無く、室内灯が消灯したので、張込みを解除した。
翌日、同マンションの名義人、電気ガスの名義人を調べたが、男性名義であった。
但し、女性の名字と同じ名義である為、父親か夫の可能性が考えられる。
早朝から同マンションを張込み、部屋から出てくる人物を調べれば、判明すると思ったが、同室から出てくる男性はいなかった。
昼過ぎに、近くのそば屋から出前が同室に届けられた。
暫くして、同室のドア前に出前の器が出されており、器の数から判断すると、一人で生活している様子である。
夕方、女性は外出したがスーパーにて夕飯の買物をしただけであった。
女性の素晴らしいプロポーションに魅入り、すれ違う男性の多くは振返って女性の後姿を見ている。
外出時に、女性はマンション前にゴミを出しており、その内容物を調べたが、女性の一人暮らしに間違いない。
我々は、女性が住んでいる部屋の住民票記載事項がどのようになっているかを調べたが、女性と同年輩の男性名義となっている。
名義人の戸籍記載事項を調べる事としたが、名義人である男性とその両親しか記載されておらず、名義人の男性は独身であった。
この事より、名義人の男性は女性の父親でも夫でも兄弟でもない事が判明した。
女性の名字と名義人の名字が同じ事を考えると、親戚の可能性も考えられる。
我々は、この時に重大な判断ミスを犯してしまっていたのである。
その真相は、翌日の調査で判明した。
朝から同マンションで張込みを行なっていたところ、夕方になり女性が外出した。
尾行により、行先を確認したところ「SM ゲイ クラブ」にその女性が入店したではないか。
女性が一人で「ゲイクラブ」に???
数時間が経過しても同店から女性は出てこないので、調査員の一人が同店に入り、様子を伺う事とした。
店内で調査員はホスト?ホステス?の顔写真を見せられ、指名があるか聞かれた。
その写真の中に、被調査者である女性?の写真が載っているではないか!!!
調査員は無意識の内に店員に質問していた。
「ここに載っているのは総て男性ですか?」
「・・・勿論ですよ。」