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珍事件手記 第25話 珍調査員

珍調査員

其の一 「女性珍調査員」

いつものように、私のデスクの電話がけたたましく鳴り響いた。

今回の依頼内容は、19歳の娘が男性と交際している様子であるが、交際を親に内緒にしているので、どんな男性と交際しているか調べて欲しいと云う依頼内容である。

被調査者の娘は、喫茶店にてアルバイトをしており、勤務時間は午前6時30分から午後2時までである。

勤務が終ってから一旦帰宅し、午後6時から8時の間に出掛ける事が多い。

被調査者が若い女性であるので、調査員も若い2名の女性を選任した。

この二人は、学生時代からの親友で、陸上部の短距離走で活躍していた二人である。

被調査者である女性の自宅前に、張込みに適した公園があり、女性調査員はその公園のベンチに二人で座って夕方から張込む事とした。

午後7時50分、被調査者の女性が自宅より出たので、尾行に移ろうとした時の事である。

二人の調査員に、後ろから声を掛けて来る人物がいた。

「ハ~イ、何しているの?」

女性調査員が振返って見ると、6人の大柄な外国人男性が、にやけた顔で立っていた。

二人の調査員は、知らん顔をして被調査者の尾行についた。

しかし、6人の外国人男性は尚も着いて来る。

「何処行くの?」「一緒に遊びに行こう」「楽しい所を知ってるよ」

外国人男性は口々に女性調査員を誘い出したのである。

一人の外国人男性が、女性調査員の腕を握って引き止めようとした時、「ムカッ」ときた調査員は外国人男性に怒鳴り付けた。

「ファック・ミー!」

怒鳴ってから、女性調査員は「ハッ」と気付いた。

そう、「ファック・ユー」と言うべきところを「ファック・ミー」と言ってしまったのである。

既に事は遅かった。

6人の外国人男性は更に、にやけた顔付きとなり女性調査員を囲み始めた。

二人の女性調査員は、学生時代に短距離走で慣らした足を持ち、公園内を一目散に逃げ回った。

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其の二 「男性珍調査員」

若い男性調査員が当部署に配属となった。

大抵の張込みは車輌内で行ない、付近に尾行用のオートバイを配備しておく。

この調査員は、緊張の為か張込み中に5リッター以上もの飲料水を常時摂取していた。

配属後、数回の調査現場を終えた或る日、その事件は起こった。

いつもの如く、その調査員は張込み車輌内にて大量の飲料水を摂取していた。

被調査者が行動を起こし、その調査員はヘルメットを被ってオートバイで尾行を開始した。

何事もなく、被調査者の行動を逐一把握した調査員は、会社に戻ってきた。

しかし、様子がおかしい・・・

調査が解除されたにも関わらず、ヘルメットを脱ごうとはしないのである。

「どうした?」

「・・・ヘルメットが・・・」

「ヘルメットがどうした?」

「・・・脱げないんです。」

我々は、3人がかりで調査員のヘルメットを引っ張ったり、捻ったり、揺すったりしたが、ほっぺたがピッタリとヘルメットに密着し、ピクリともしない。

30分以上を掛けて調査員のヘルメットを皆で引っ張り回し、やっと分離する事が出来た。

しかし、調査員の顔は見るも無残な面相となっていた。

・・・この事件から13年、この調査員は、ややスリムな体型になって勤務致しております。